Sweet Raspberry Romantica

シーンサンプル 4




【ナッシュ】
(なん……だ。ここは。俺は……?)

あまりにも予想外な景色を目の当たりにして、ナッシュは双眸を大きく見開いた。
そこは、ひどく薄暗かった。
天井が高く、だだっ広いわりに、妙に閉鎖的で息苦しい。
巨大な円柱が何本も立っていて、備え付けの燭台には青白い火がぽつぽつと灯っている。
異様な空間だった。
肌寒く感じるのは、周囲に立ちこめている陰気くさい靄のせいなのか。
ナッシュは持ちうる限りの記憶と知識を引き出し、今居る場所は天使軍城の地下室だろうと見当を付けた。
それも、滅多に誰も近付かない――かつて戦死者の遺体置き場だったと噂されていた――

【ナッシュ】
「っ!」

ふいに掌に触れる冷たさ。

【ナッシュ】
(氷だ。……氷?)

そこでナッシュは、ようやく自分が透明な冷たい箱に入っていたことに気付いた。
『箱』と言っても、成人した男天使の体格を持つナッシュが仰向けで寝られるくらいなのだから、相当な大きさがある。
ただの箱じゃない。
これは――この造型は、まるで――







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